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【上演台本】ひとり芝居2編『それは、満月の夜のことでした/猫ひも』(30分以内1人)

700円

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作:久野那美 <台本冒頭> コンビニの帰り道。坂道をだらだらとのぼる。 街灯がぽつぽつと立つ道には人かげもなく。あたりはうすぼんやりと明るい。 遠くから、音がする。 ごろん、ごろん、地面を伝う音がする。 音はだんだん、大きくなる。辺りは白く光っている。 ごろん、ごろん、ごろん、ごろんごろんごろんごろんごろんごろん・・・・・。 少しずつ、だんだんに、大きくなる。 辺りは白く光っている。 だんだん大きくなる。だんだんだんだん大きくなり、私の目の前で止まった。 静寂。 私も立ち止まる。まっすぐ、前を見る。 あたりがしんと静かになる。 まっすぐ、前を見る。おおきいので、正確には、前を見上げる。丸い。丸くておおきい。 ぼんやりと、白く光っている。 地面には私の影。月明りに照らされた、私の影。月明りということは、月なのか。 丸い月?丸いのだから満月か。 満月? 私は話しかけてみる。 「こんばんは。満月だったんですね。今夜。だからこんなに明るいんですね。」 「ちょっと、驚いてます。今夜、誰かに会うなんて思わなかったから。」 月が道をふさいでしまって通れないので、そのまま立ち止まっている。 しばらく。 しばらく。何も起こらない。 「何か、待ってますか? 何か、答えたほうがいいですか? 何に答えたらいいでしょう。 無口なんですね。 私は、月は、無口なほうが素敵だと思いますよ。 饒舌な月っていうのは、ちょっと。 べつに、媚びてるわけじゃないですよ。 月とか星とかって、何を考えてるのかわからないくらいがちょうどいいと思うんです。 あんまりわかりやすく丁寧に説明されたら・・・・・、 きっと、誰も空を見なくなると思います。 だから、無理してしゃべらなくていいですよ。」 そういうわけで、ふたりとも黙っている。 しばらく。何も起こらない。 「私、あなたのこと覚えてますよ。ひとつきにいちど、あなたは必ず現れる。 これまでに、きっと何度も見かけてたのに。 その夜は、誰かに会うはずだったり、何かをしてる最中だったり、別の何かを見てたりしたから。 だから、会ったのは今日が初めてです。 はじめまして。 ふつうの夜ですね。 はじめて出会うっていうのは、とても、特別なことだと思うのに、特別なことは特別な夜に起こるわけじゃないんですね。」

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